2009-07-04
何年かぶりに伺った。夜7時頃であっただろうか。入り口辺りの佇まいは縦に細長いビルの1階とは思えない風情のあるエクステリア。靴を脱いで上がるところも変わっていない。先客は一人だけ。テーブル席に着きせいろを頼む。やや平麺的な切りが特徴的であるが、麺のコシ、蕎麦粉の風味は相変わらずしっかりしている。つゆはこれまた当世風というか出汁がきっちりと利いたお味。くどいようだが、麺のレベルが高いだけにつゆこそもう少し「粘り」が欲しい。その後すぐに月島に向かわねばならなかったので、天ぷらなどを頂くこともできず早々に失礼した。
ご主人らしき方も出て来られていたが、以前お目にかかった方とは違っていたような。ひょっとして代替わりでもあったか。
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2009-06-20
音にきく修善寺「朴念仁」の東京再出店の銀座「古拙」にお邪魔した。ミシュランの星がついているらしい。そのせいか夜はなかなか予約がとれない。ということで、お昼に伺う。銀座と言っても京橋のちょっと先、乱暴だがホテル西洋と歌舞伎座のちょうど間ぐらいにある。確かにわかりにくい場所にある。しかも地味なビル(?)の2階。まずはこの佇まいからして敷居の高さを感じてしまうのは庵主だけではなかろう。お昼は蕎麦だけの単品はなく1,600円程度からのセットメニューのみのようだ。蕎麦膳を頼み、もり蕎麦を選択。
麺の切り幅は通常の多分半分程度。ほとんど素麺なみの細さである。上品な笊の中心にこんもりと盛られている。麺だけをいただく。これだけの細さに切るには相当な熟練が要求されることであろう。しかも、その細さにもかかわらず、抜群のコシと口中でパァっと広がる蕎麦粉の風味。間違いなく麺だけで1枚ぺろっと行けそうな出来栄えである。極端な細めんの故、当然のことながら麺と麺の間に多めの水分が残ることと、盛り方があまりに無造作であるが故に麺を適当な量に取り分けるのが難しいのがちょっと残念。できれば、ちょぼちょぼに分けて盛ってもらいところだが、この細さでは茹で上がった時点ですでに麺が絡み合っていてそれを解(ほぐ)している間に麺がクタクタになってしまうのであろう。
半分ぐらい食べたところでつゆを試してみる。ここもやはり当世流と言うのか極端なまでに出汁が先行したつゆ。色は黒い割りにかえしの粘りが感じられない。みりんのアルコールを飛ばし、三温糖をもうこれ以上は溶けないというところまで溶かしたときに生まれるかえしの粘り。あの「キャラメル」の粘り感みたいなものが、もう少しあった方がしっかりと麺に絡み、蕎麦の風味と解け合うのではないかと愚考する。
蕎麦膳についてきた小鉢はいずれも美味。このお出汁はこうした和食にこそぴったりのお味である。
ミシュランもおそらくはプレーンな「蕎麦屋」としてではなく、店内の凛とした雰囲気、上質の蕎麦と和の贅を尽くした酒肴の数々を高く評価したものであろう。
神田「石井」時代には行きそびれてしまったが、どんなお店だったのか今になってふと知りたくなった。
銀座「古拙」 中央区銀座2-13-6 03-3543-6565
2009-06-20
赤坂プルデンシャル・プラザのジパングに時々伺うのだが前から大通りに面したこのお店のことが気になっていた。おせいろを頂く。普通のつゆとごまだれと思しきつゆがもれなく付いてくる。
麺は普通の切り幅、色はやや薄めか。よく見ると更科蕎麦と書いてあるので、御膳そばに近いそば粉なのかもしれない。見るからにエッジもしっかり、コシがありそうな雰囲気。まず麺だけいただく。予想にたがわずとてもしっかりとした口当たり。蕎麦の風味もしっかり感じられる。普通のつゆで一口いただく。こちらは当世流のかつを(?)出汁が前面に出た風味。こうなると力強いお蕎麦に負けてしまい、なんとなく間延びしたつゆの風味だけが舌に残ってしまう。胡麻ダレは(当然なのだが)しっかりと麺にからみ美味しくいただけるが、同時に蕎麦の風味も覆い隠してしまうのはちょっぴり残念である。
蕎麦湯も当世風にそば粉を溶いてあると思われるが、この手の蕎麦湯の場合、どんなそば粉を溶いてあるのか、そこが気になるところだ。
おそらく夜の酒肴と銘酒がこのお店の売りであろう。外のテラス(?)席があるのは大いに魅力だ。
2009-06-17
閉店になった八重洲「三日月」の流れをくむお店と伺っている。「辛味おろし」と聞くとつい反射的に注文してしまう。麺はかなり細め。蕎麦粉のもつ風味とほんのりとした甘みを感じさせる上質の麺である。つゆはかつお出汁がしっかりと利き、一茶庵系や翁系を思わせる上品な仕上がり。返しの粘度とコクは軽めで、細めん故に麺肌に残りがちな水分によってつゆが薄まってしまうのは止むを得ないか。このつゆだといずれは「かけ」を食べてみたいものである。
丸の内 新丸ビル5F 03-5879-4680
2009-06-10
久しぶりに中に入れた。そうそう、まるで人の家に上がりこむような、というか田舎の親戚の家に法事の後に集まって食事をするときのような、そんな感じのする店内だったと、以前の記憶がよみがえる。もちろん靴を脱いで「お宅にお邪魔するのである」。まずはおせいろから。切り幅ほぼ標準で色も極淡茶。光線の加減かもしれないが、麺肌のツヤがことのほか輝いていた。まずは麺だけでいただく。適度なコシ、適度なエッジ感。蕎麦の風味がごくほんのり。つゆはかなりの出汁先行型。濃い目のかけ汁でもりをいただいている感じ。もう少し、かえしを効かせたつゆにした方がこの蕎麦には合うであろう。だし先行のつゆに出会ったときのお約束ごととして、「かけ」をお代わりとした(じつはかけではなくとろろをたのんだのだが・・)。つけ汁から想像したとおりのこくのあるかけ汁。麺のコシがかけでもいささかも崩れないところは元の蕎麦のできがいい証拠だ。最期までつゆを飲み干したら少し暑くなった。
2009-06-06
三日月は昨年の4月に閉店となり、その後は「おにわか」というはやり手打ち蕎麦
を食べさせるお店になっていた。せいろをいただいた。長方形の一茶庵系のお店で
よくみかける器に入った蕎麦はいかにもエッジが立っていて期待が高まる。まずは
つゆなしで食べてみる。予想にたがわずしっかりとしたコシに心地よいシャープな
食感。蕎麦粉の風味も十分に感じられる秀逸の麺である。薬味のねぎもわさびもい
いものが使われている。三日月の打ち手は高橋邦弘さんに師事したと聞いたが、こ
こもやはり高橋さんのお弟子さんであろうか。かつお出汁の効いたつゆといい、翁
系を思わせる仕上がりにその思いを強くする。
ところで閉店前の三日月の打ち手は現在は丸ビルの「石月」にいらっしゃるとのこ
と。近々伺ってみたいものである。
「おにわか」 中央区八重洲2-10-7 丸万ビル 1F 03-3516-6801
2009-06-06
経堂「経堂」ははるばる出かけたにもかかわらず、たまたまその日は臨時休業。一度目は早仕舞いで入れず、2回目はかろうじて食せたが、3回目はお休み。庵主の日頃の行いがよほど悪いか、ご縁がないか。それだけに渇望感が高まるのも事実。
さて、気を取り直して都心に戻り、日本ばし「やぶ久」に初めてお邪魔する。なるほど明治三十五年創業と言うだけの歴史を感じさせる雰囲気の店内。時間も遅かったのでとりあえず「もり」1枚を頼む。麺は標準の切幅、色は淡目ながらもしっかりとした蕎麦の色。エッジも綺麗に揃っている。麺だけを口に運ぶとまず最初に感じるのはほとんど「茹でむら」かと見まごうほどのコシである。そして圧倒的な蕎麦の風味。おもわずつゆ抜きでそのまま一枚行ってしまいそうであった。つゆはそれだけを舌にのせると「やや甘い」と感じるが、この麺とはとても相性がよくしっかりと絡む。そして薬味の葱を加えたところで、味のハーモニーが完成する。わさびも上質だが、それは使わずに麺・つゆ・葱の絶妙なバランスを堪能したいものだ。こんな銘店を見逃していたこと自体が庵主の行いの悪さと言えよう。
日本ばし「やぶ久」 東京都中央区日本橋2-1-19 03-3271-0829
2009-06-03
瑠雨庵のあった場所はハイエンドの立喰い系蕎麦屋に変わっていた。なかなか上品なお店だっただけに残念。
2009-06-03
90年代以降の蕎麦ブームの乗ってできた手打ち蕎麦屋の栄枯盛衰が激しい中、ここ日本橋「元禄」は定番の銘店として堅実にやっておられる。田舎、せいろとも蕎麦の風味が生かされたしっかりとした麺である。ただ、これだけ上質の蕎麦に合わせるにはつゆにややキレがないか。甘くもなく辛くもなく、蕎麦の表面についている水分で簡単に薄まってしまう。せいろの水切りが甘いのかもしれない。蕎麦湯はそば粉を溶いたドロッとしたもの。同じようなそば湯は他でも見かけるが、ここはかなり濃い。好みの分かれるところか。
2009-06-03
久しぶりに伺った。実は初めて知ったのだが、神田の藪の直系御四家は浅草並木、浜町、藪伊豆、そしてなんと高輪の4店なのだそうだ。並木、浜町、藪伊豆はなるほどと思わせる高いクォリティの蕎麦を食べさせてくれるが、高輪はどうであろうか?(ひょっとして高輪の藪って泉岳寺の藪のことじゃないの?)また、自由が丘駅前の藪伊豆は何十年も前に日本橋から暖簾分けしたお店で今では経営的にはまったく関係ないとのこと。前置きが長くなったしまったが、相変わらずやや細め、色もやや薄めの上品な蕎麦である。これと一番そっくりなのは個人的には浜町藪だと思う。つゆは並木ほどキリッとしまった鋭さはないものの、きちんとかえしが先行していてしっかりと麺に馴染む。麺との相性としては申し分ない。結構高いビルにされていることもあり3階では結構な規模の宴会ができるとのこと。一度、蕎麦会でもやってみたいものである。
2009-06-03
何年かぶりに巴町に伺った。相変わらずお昼時はお客さんの出入りが絶えない。久しぶりにお邪魔したからには「趣味のとろそば」を頼まない手はないだろう。ふんわりとあわ立ったとろろのつけ汁が刻み海苔のかかったおせいろと共に運ばれてきた。砂場さんらしい切り幅やや細めの白っぽい蕎麦である。これをそのまま食してみるとほのかな蕎麦の香りとちょうどいい具合の歯ざわり、極上の麺であることが分かる。この蕎麦と先ほどのあわだったつゆとの相性が抜群によろしい。
思わずおせいろのお代わりをお願いしようとお花番に声をかけたが、ふと「うどん」はいかがなものかと2枚目はうどんせいろをお願いした。しかし、「うどん」というと今やASWを使った讃岐風のグルテンのコシが利いた麺に慣れてしまった庵主にはこの真っ正直なうどんはやや迫力がなかったと言わざるを得ない。でもこれは東京屈指の巴町でお蕎麦でお代わりしなかった庵主が外道というもの。女将さんが「つゆが余ったらこっちにかけてみては」と気を利かせてくれた小さなお茶碗のご飯のお陰でとろろの最期のひとしずくまで堪能することができた。
2009-06-03
「蕎麦三昧」の情報更新も兼ねて虎ノ門から霞ヶ関に移転した「出羽香庵」にお邪魔した。ちょうど首都高「霞ヶ関」の入り口と霞ヶ関ビルの間に建つ「新霞」に新しいお店はある。虎ノ門の山形県の物産を紹介する「ゆとりろ」の一角にあったときに比べると、現在のロケーションは残念ながらちょっと風情に欠けることは否めない。しかし、自慢の「板そば」は相変わらずムッとするような蕎麦の風味豊かでコシもあり、蕎麦だけでいただいても十分に楽しめるところは以前どおり。本格的な板そばを東京で召し上がりたい向きにはお勧めのお店である。
千代田区霞ヶ関3-3-2 新霞ヶ関ビル1階 03-3504-8715
ちなみに「ゆとりろ」自体は銀座1丁目に移転し、「おいしい山形プラザ」 として再出発している。
こちらは 03-5250-1750にお問い合わせを。
2009-05-31
昨年末以来となる築地「さらしな乃里」に会社の同僚とお邪魔した。辛み蕎麦を頂いた。麺のレベルの高さは以前のまま。相変わらず水切りがやや不十分なところも変わっていなかったが、トータルのクォリティとしては非常に高いものがある。もう今の場所に引っ越して5年にとのこと。月日の経つのは早いものだ。
Il tempo vola!
新しい住所:中央区築地 3-3-9 電話:03-3541-7343